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ものづくりについて

「2.5次元舞台ってなに?」の問いはなんでこんなに答えづらいのか。

   

『2.5次元舞台』という言葉も、だいぶ耳慣れてきました。最近では、舞台情報のWEBサイトに『2.5次元』というページができたり、専用サイトが新設されたりしています。

そこで幾度か戸惑ったのが、『2.5次元舞台』とはなにか、ということ。

たとえば、私はライターとして作品の記事をカテゴリー分けすることが多いのですが、「この作品って『ミュージカル』もしくは『ストレートプレイ』?それとも『2.5次元』?どのカテゴリーで掲載しよう??」と迷うことがあります。

また演劇好きの友人から「『2.5次元舞台』というものを観てみたいんだけれど、どれ観ればいい?」ともよく聞かれます。この答えにも「うーん、作品によって全然違うし、私も観てみないとどんな感じかわからないから答えづらいなあ。かといってシリーズものを途中からおすすめするのもどうなんだろう」と窮してしまいます。「じゃあ今度やる「×××」ってどうかな?」なんてチラシを見せられても「2.5次元舞台といえばそうなんだろうけど、ちょっと演劇っぽい雰囲気もするねえ」なんて中途ハンパな答えを返してしまったことも数知れず。チラシ情報だけでは、どんな作品にしあがるのか演劇以上に自信が持てないこともあり、質問してきた相手の好みを知っていても、あんまりハッキリと「これ合いそうね」とはおすすめしづらいです。

今のところ私の『2.5次元舞台』の定義としては、2次元(マンガやアニメ)が原作の舞台化を『2.5次元舞台』と呼ぶのかなあと思っています。
でも、近年の「プルートゥ」(原作・浦沢直樹)や「死刑執行中脱獄進行中」(原作・荒木飛呂彦)はコンテンポラリーダンスでの表現が多いし、キャラの見た目を原作には寄せてないし(色付のカツラとかかぶってない)、いわゆる最近言われている『2.5次元舞台』かは微妙。ミュージカル「花より男子」はキャラクターのビジュアルも性格も原作を下敷きにしつつ、あの長い話を3時間ほどにおさめるために展開を変え、鈴木裕美さんの演出はヒロイン視点ではなく相手役(道明寺視点)も強く出していて、原作とは違う一本のお芝居という印象が強かったです。(これは感覚なので、私の主観かもしれません)。また宝塚の「るろうに剣心」や、東宝の「王家の紋章」も、2.5次元舞台というよりは、“宝塚”であり“東宝ミュージカル”だと言った方が、人に説明するときに伝わりやすい気がしています。

じゃあ『2.5次元舞台』と言い切れるのはどういう作品かというと、最近では「黒子のバスケ」「NARUTO-ナルト-」「刀剣乱舞」「クジラの子らは砂上に歌う」「艶漢」「FAIRY TAIL」「弱虫ペダル」……なんかがそうなのかな。私がよく記事を書かせていただいているエンタステージではそう分けています。

そもそも『2.5次元舞台』とひとくくりに言ってはみても、作品によってかなり表現形態も客層も異なります。演劇的要素の強いものもあれば、映像を駆使したショーに近いもの、アクションショーのようなもの、実写化に寄せたものなど、作品により様々です。

客層もいろいろあって、多いんじゃないかなあという順に並べると……
(※主観です。もちろん作品によります)
①「マンガを上演した舞台」のファン
②役者のファン(出演作のほとんどが2.5次元舞台経験の多い役者)
③マンガ原作ファン(主に女性)
④アニメファン(主に女性)
⑤BLファン(原作そのものを楽しむというよりカップリングや2次創作を楽しむファンをひとまずこう書きました)
⑥その他(たぶん少数)
⑦演出や脚本のファン
⑧役者のファン(2.5次元舞台にはあまり出演しない役者)
⑨コスプレファン(原作そのものを楽しむというよりコスプレを楽しむファンをひとまずこう書きました)
(わかりやすいように、あえて全部をファンという言葉で統一しました)

劇場へ足を運ぶ目的として、その作品を観に来た、というより、作品が目の前で動いているのを体感しに来た、という言葉の方が合っているのではないでしょうか。
なので客席には「演劇の劇場」としては珍しい反応も多く、たとえば、キャラクターの名前を叫ぶ女性が何人かいます。(「忍ミュ」(忍たま乱太郎ミュージカル)では開演前に乱太郎の声で「名前を叫ばないでくださいねっ」とアナウンスが入ります)。

また、グッズを買うファンの方もとても多く、それがお客さん同士のコミュニケーションになったりします。たとえば、よくアニメイベントなどである“ガチャ”ができる公演も多いです。いわゆるガチャガチャ(ガチャポン)で、たとえばキャラクター(役者さん)の顔の缶バッヂが当たったりします。狙ったものが当たるとは限らないし、何回かガチャを回すと同じものが何個も当たったりするので、SNSなどで事前に「○○持ってる方交換してくれませんか?」「じゃあ×日に劇場でお会いしましょう」みたいなやりとりが行われています。そこでファン同士が出会ったり、同じキャラが好きな人同士仲良くなったりします。この様子は、宝塚やジャニーズやコミケやアニメイベントである流れだと思います。

という雰囲気なので、そもそも多くのお客さんは演劇表現を観にきているというより、好きなキャラ(宝塚の場合は好きな生徒さん(=タカラジェンヌ))に会いにきていることが多いのでしょう。このお客さんと作品の関係もまた、ジャニーズや宝塚、そして劇団四季に似ていると思います。それらはそれぞれ独自のファンや公演形態を確立しています。

 
じゃあなんで作品をカテゴリー分けする際に2.5次元舞台かどうかで戸惑ってしまったり、2.5次元舞台をおすすめする時に答えに困ってしまうかというと…………今言われている2.5次元舞台は、ひとつの団体が運営しているわけではないからじゃないかなあと思いました。

たとえばジャニーズも劇団四季も東宝も宝塚も、ひとつの会社が発信するコンテンツサービスです。宝塚でも東宝でも『エリザベート』を上演していますが、ごっちゃにはなりません。別物です。(主観ですが)。
また2.5次元舞台のなかでも「テニミュ(ミュージカル「テニスの王子様」)」や「忍ミュ」くらい長年かけてシリーズ化されイメージが定着しているものなら、もうどこが企画運営していても気にならないほど、すでにひとつのジャンルになっていると思います。

映画におきかえて考えてみると、ディズニーなのかピクサー(合体したけど)なのかマーベルなのかでだいたいどんな感じなのか予想がつきます。また監督も団体のトップだと考えると、黒澤組、大島組などと言われるように「あの監督だったらこんな雰囲気かな」というのも想像できるので、大はずれもなく安心して映画館に出かけられます。
演劇もミュージカルもそうで、「三谷幸喜はあんな感じのコメディだろうな」とか「あの劇場で上演するならクオリティ高そう」というのもなんとなく予測できます。

でも一回完結のマンガ原作舞台の場合、チラシを見て「その作品のクオリティを期待して楽しみに行くといいのか(=原作を知らなくても楽しめるのか)」「作品のファンとして舞台化されることを楽しみに行くのか」など、どういう楽しみ方ができるのか、事前になかなか予想できません。

2.5次元舞台は数年で急に数が増え、製作・企画会社も多くあり、いろんな劇場で公演されています。制作会社もネルケプランニング、マーベラスはじめ、テレビ局企画のものもあれば、バンダイなどのアニメ・ゲーム会社、エイベックス、ホリプロ、ゴーチ・ブラザーズなどのプロダクションが関わっていたり、総称して『◎◎◎(=作品名)製作委員会』というどこかわからないものもあります。演出家の出身も、商業演劇、小劇場、イベントショー、プロデュース業などさまざまです。

つまり「これってこういう感じのテイストに出来上がるんだろうなあ」ということが、事前に予想しづらいんです。そして上記の方々が関わっていることで、作品によって演劇色が強いものもあれば、ショー要素が強いもの、アニメに忠実なもの、腐女子向けのもの、イケメン俳優押しのものなどいろいろな要素がごちゃまぜになっており、分類しづらいのです。

おそらくあとしばらくすれば、制作側では、名の通る人も目立ってきて、公演形態も定まってきて、得意不得意もできてきたり、クオリティもあがってきたりと、いろんなことが明瞭になって、おのずと棲み分けが出てくるのでしょう。観客としても、何作品も観続けているうちに、だんだんと傾向がわかってくるでしょう。

今はまだ渾然一体といいますか、十把一絡げな感じに見えます。

「2.5次元舞台というものを観てみたいけどどれを観たらいい?」という友人の質問に、自信を持って「あなたにはこの作品が合うと思うよ!」と言うには、まだまだ時間がかかりそうです。
 

 
余談ですが、先日初めて2.5次元舞台のライビュ(ライブビューイング)に行って来ました。作品は「黒子のバスケ」。新宿のTOHOシネマズです。ビルの上にゴジラが乗っているところです。

チケットはかなり早い段階で完売。客席はほぼ女性で、探してみると男性は、おじさま一人を発見いたしました。映画が始まると、映像画面に向かって役名を叫ぶ(のを我慢してるけど漏れてる)女性がいました。
原作は週刊少年ジャンプだし、作品は男性でも楽しめると思うけど、この大量の女性たちが「カッコいい!」と言ってるなかに男性が来るのは、勇気いるでしょうね……。(ちなみに「ハイキュー!!」も週刊少年ジャンプ連載で、舞台も映像を駆使したエンターテイメントスポコンで男女ともに楽しめるショウでしたが、観客はほぼ若い女性)。
リアルタイムのライブ映像なので、時々カメラワークのミスやピンぼけなどもありましたが、劇場よりも安く快適なイスでお菓子を食べながらドアップでいいシーンが見れるので、おおむね満足。最後、スクリーン上では劇場のお客さんが帰り始めた後に画面が切り替わり、エンディング映像が流れるのはすごく楽しかったです。主題歌を聴きながら良いシーンと役名を振り返りつつ、スタッフさんの名前までしっかり確認できるのは良かったです。

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