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ものづくりについて

4月の演劇ベスト3(5月も上演しているもの限定)

      2016/06/03

 

4月の演劇振り返り。
ただ感想を書いてもしょうがないかなーと思いつつ、おすすめの意味もこめて、5月も上演している作品のなかからベスト3を選びました!
まだご覧になっていない方、また5月の上演地域付近の方のご参考になればと思います。

では。

 

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 <あらすじ> ※サイトより一部改変
19世紀英国、豪奢なカヴァリー家の屋敷。そこには著名な詩人バイロンも長逗留している。
屋敷の令嬢である13歳のトマシナ(趣里)は、住み込みの家庭教師セプティマス(井上芳雄)に勉強を教えてもらっている。しかし、天才的な頭脳を持ったトマシナの好奇心には、セプティマスも歯が立たない。
あるときトマシナは、屋敷の庭園の手直し用の設計図に、何気なくちょっとした絵を書き込む。その行動が200年後に大きな波紋を広げていくことに……。

————200年後、現代。
同じ屋敷の同じ居間にいるのは、ベストセラー作家のハンナ(寺島しのぶ)。そこにライバルのバーナード(堤真一)があらわれ大モメ!二人の争いは、カヴァリー家の末裔の兄・ヴァレンタイン(浦井健治)と妹・クロエ(初音映莉子)を巻き込み、200年前との時が繋がっていく……。

<同じ屋敷の同じ場所>。
それぞれの時代に生きる人々のドラマは、加速しながらクライマックスへと向かっていく。
交わらぬ時代が、遺伝子の螺旋のように絡まる時、そこに浮かび上がるものは……。

はじまってしばらくは「あれー退屈かな?」と思ったけれど、結果、素晴らしかった。素晴らしかった。途中休憩があるのですが、前半にも泣き、休憩後の後半はほぼ泣き通し。

ネタバレなど嫌な方もいらっしゃるとは思いますが、この作品、事前の知識が多いほど想像が広がり深まると思います。たぶん事前に演劇雑誌などを読んで知識を得ていなかったら、こんなには泣かなかったんじゃないかなと思うほど泣きました。そして観る前でも後でも、批評や解説などを読むことで「ああ、あの表現にはこういう意味も隠されていたのか、それが表現できるのが演劇なのか」と深まります。雑誌やWEBや当日パンフレットで演出家の思想などに触れることで、発見や想像力の可能性は広がるんだなあ、と再確認する作品でした。単純に「楽しい!」などというエンターテイメントの先にある、良き芸術としての演劇作品。

13歳の天才数学少女が「肉体的抱擁ってなに?」と問うシーンで始まる。
彼女は「肉体的抱擁」をどう知っていくのか。
人生で、なにをかいま見、なにを知り、なにを得るのか。

亀のプロータス(これ名前ね)の存在意義が大きい。亀が登場するんだーってことは、作品を観る前に知っていました。そして、知っていて良かった。2つの時代が交錯する物語において、万年も生きると言われる“亀”がいることで、私たちは、時間の永遠と儚さを同時に考えながら、生きることを絶望しつつも希望を感じられるのです。

ラストシーンの演出が素晴らしかった。
ふたつの時代が重なっていく。その、重なる時、曖昧な時、それがはみ出す時、その描き方。美術をいかした栗山さんの演出は優しく、繊細で、なのにはっきりと意志がある。こんな表現ができるのは演劇こそじゃないか!

冒頭の天才数学少女の問い「肉体的抱擁ってなに?」。
各所に散らばる「肉体的抱擁」と「数学」。性欲と知能。感情と合理。
相反するようなその言葉の狭間に、愛と永遠が横たわる。

世界はすべて主観で、過去は永遠で、永遠は今だった。数学と科学と愛と詩と生と死と古さと新しさとすべて。

そこにただいて、生きて、愛していいんだって感じた。
ふと、ときどき観たくなる、そんな作品でした。

▼今後の公演
5月4〜8日、森ノ宮ピロティホール(大阪)
 
 
 

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親友4人の男の、20代前半から80代にかけてを描いた一幕。
バカバカしくて、男の人ってばさ、いつまでたっても子どもで、懸命で、可愛くて、切ないほど愛しい。
こちらは「アルカディア」と真逆で、事前知識も事後知識もゼロでいいです。ただ、自分というひとりの人間が劇場に行けば、きっとなにかが響きます。自分が生きてきた軌跡こそが事前知識だよ、と言えるほど、パーソナルな物語として受け取れます。パーソナルであると同時に、誰もがどこか共通点を感じられるという意味では、普遍的な物語としても受け取れます。

笑って怒って泣いて。4人と一緒に60年を、4人ぶんの60年を垣間見せてもらった。
それは走馬灯のように。自分の人生ではないのに、どこか自分の人生のような60年。
最後のシーンで私たちは、いつかくる自分の“老い”を受け止める余力もないまま、帰路につくことになる。

生きる人たちに、演劇を観ない人たちに観てほしい。
素晴らしかった。たった2時間に、当たり前の人生がすごい密度で詰まっていました。
わたしは女だからかな。たくさんたくさん笑って、男の人を好きになって、裏切られて、でもまた愛して、寄り添って、生温くて泥臭い恋をしたみたいな時間でした。男の人の感想はきっと違うと思いますし、女も年齢が違えば感想も違うと思います。だってこの作品、誰でもの人生でもあるけど、パーソナルなものでもあるから。(うちの母なんて、「もう今さら男の人はいいわよ」と笑っていました。なるほどね)

▼今後の公演
5月3〜4日、サンポートホール高松(香川)
5月7〜8日、西鉄ホール(福岡)
5月14〜15日、ロームシアター京都(京都)
 
 
 

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 <あらすじ>
神インドラの娘・アグネス(早見あかり)が雲の上から地球を見下ろしているところから始まる。父である神(白井晃)から「地上へ降りて人々の不満や嘆きを見聞きしてこい」と告げられたアグネスは、地上の人間たちに「あなたの不満を教えて」と聞いて回っていく。

まるでなにも知らない赤ちゃん。
そんなアグネスは地上で、寿命のある“人間の生”を目にする。
アグネスが出会うのは、名誉に執着した男、報われない恋をする若者たち、病を抱える人々、貧困と差別……。アグネス自身も家族というものを経験しながら、人間の生活を学んでいく。彼女の口からは何度も同じ言葉が出る……「人間って哀れだわ」。
そんな彼女がある時、詩人(田中圭)と出会う。
現実のもので在り、現実以外のものに思いを馳せる、その詩人とともに、アグネスが辿り着いた“人間”とは……?

上演困難と言われるストリンドベリの脚本。難解かと思っていたけれどそんなことはなく、とても良かったです。
なによりも演劇空間の美しさ。美術、衣装、身体……それらの要素が作り上げる空間こそ、まさに夢の劇でした。“物語”ではなく“人間の世界”に浸る時間。白井さんの演出の魅力がよく見られる舞台です。小竹信節さんの舞台美術と佐藤佐智子さんの衣装が美しい。時折差し挟まれるダンスが、ただの場面転換ではなく、力と柔さをもって軽やかに屹立し、意味を持つ。

アグネスと共に、人間の世界を生き、体験した2時間。
もうすこし詳細については、写真つきのゲネプロレポートを書いています。

▼今後の公演
5月4〜5日、まつもと市民芸術館(長野)
5月14〜15日、兵庫県立芸術文化センター(兵庫)

 
 
 
さいごに、『アルカディア』も『夢の劇ードリーム・プレイー』も、“詩人”が世界に果たす役割が強かったです。かつてヨーロッパにとって詩人の価値は高く、詩人のもたらす世界も果てしなかったんだと思います。
かつては日本の詩もそうでした。
宮沢賢治、中原中也、萩原朔太郎、金子みすゞ……最近では谷川俊太郎も、そこにかかるかもしれないかな。
 
詩人は、無限や永遠を言葉にします。
世界(神であり宇宙であり永遠)を見つめ、解体し、人生を詠み、昇華する。
生活と世界を結ぶ媒介者が、詩人だったのだと思います。
今の時代、それに代わるものがなにかを探し続けるのが、演劇であり人生なのかなと思います。
 
 

おまけ

もう終わってしまったけれど、熊本の劇団きらら「ガムガムファイター」もとても素晴らしかったです。しかも2000円ですよ。この値段で、王子スタジオ1で(わたしが観たときは観客30名ほどだったかと)、このクオリティ。満足度は、作品に登場する要素がちょっとだけ似ていることもあり、ハイバイ「おとこたち」と対をなすほどかと。
また、今回の熊本地震さなかでの演劇公演。開演前、きらら代表の池田美樹さんが「公演をするか迷ったけれど、やります」と話されました。誠実な、演劇への姿勢と、お客さんへの姿勢。気づいたら拍手を返していました。語りかけられたのだから、こちらも返さなければいけないと思った。それがコミュニケーションの基本だし、人だし、生きることだと思う。開演前の注意事項と舞台挨拶、と言ってしまえばそれだけなのだけど、いただいた思いに思いで返す、舞台と客席が線で結ばれた拍手の時間。演劇で人と人が繋がるとはどういうことだろう、と実感した瞬間。
そして上演がはじまり。
箱イスだけが置かれた、ラブホテルの舞台で、ひとりの男性の数日が描かれました。
作品そのものにとても安定感を感じました。なので、未来は知らないけれどきっとこれからもクオリティの高い作品を見せていただけるでしょう。きららさんが次の公演をされる時は、ご覧になると良いと思います。

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